それを愛だというのなら
「大丈夫? 行こう」
行こうって、どこへ……。
茶色の瞳を見返す間もなく、体がふわりと浮いた。
不安定で、慌てて近くにあったものにしがみつく。
「は……」
瞬きをして、初めて気づいた。
私がしがみついたのは、男の子の首だったんだ。
彼は私をお姫様抱っこしたまま、てくてくと歩き出す。
「ちょ、ねえ」
一瞬痛みを忘れ、彼の肩をたたく。
「じっとしてて。大丈夫、授業中だから誰も見てない」
その授業中に、あなたは何をやっているんですか。
そう聞いてやろうと思ったけど、急に強い痛みの波が襲ってきて、歯を食いしばる。
仕方ない。自分で歩けないなら、彼に甘えるしかないか……。
観念した私は、黙ってただ目の前にあるお腹の痛みに耐えることにした。