王様の命令は?
前方不注意な私が完全にわるいね。
アイスに釘付けで人にぶつかりましたなんて、何してんの私!
「すみませんっ」
「いいえー、そちらも大丈夫っすか?」
私が頭を下げていたので、視線を合わせようとしてくれたのか、少しかがむ目の前の人。
見た感じ、同年代の男子っぽいな、なんて思っていたその時。
「柚奈」
声に視線を向けるよりも先に、体が揺れる。
腕を引っ張られて、前に一歩足が出て。
もうあとは白いTシャツの背中を見上げて、手を繋がれたまま進んでいた。
「お前、急に離れんなよ」
こっちを見ないでそういう匠は不機嫌そう。
なのに、まだ手は離さないんだね?