王様の命令は?
そうだね、と頷く。
「じゃ、俺さき帰るわ」
私たちの前で足を止めた匠。
鋭い目つきと視線が交わって数秒、ふいっとそらされる。
……露骨なその態度に反応しなければいいと思うのに、しちゃう自分がいる。
私、面倒くさい性格してますんでね。ええ。
「自分で鞄届ければいいじゃん。保健室まで連れてったんだから最後まで……」
「あ?」
「……王様の命令はもう聞きませんって私言ったよね」
ツンとした表情でそう告げて、そのまま匠の横を通りすぎて教室へと足を向けた。
イラついたような舌打ちが耳に届く。
私だってなんでかイライラ気味。
これから私のこと好きになってほしいって人なのに。