王様の命令は?
ざっと見た感じ車内はほぼ埋まっていて、残っているのは匠の隣。
さっきのアレで近くにいくのは気が引ける。
無意識に指が唇に触れてしまう。
しょうがない、立つか。
そう思っていたら目があって、
「……座れば?」
「結構です…うおっ、」
バスが大きく揺れてぐらりとよろめいてしまった。
うっ、うーん…
ここはおとなしく座っておくか。
「もっとそっち寄って。狭い」
「痩せろ」
「はっ!? 匠が足開きすぎなの!」
ぐいっと足を押し返すと、舌打ちとともに冷ややかな視線を向けてくる。
なによ。
なんか文句あるんですか?
公共の場でぐらいその偉そうな態度どうにかならないのかなー!?
じっとその目を見てると嫌でも口が目に映る。
だんだんと視線がもうそれにしかいかなくて。