彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
「やれやれ、おしゃべりが過ぎたおかげで、面倒なことになったな。」
「まだなにか起こるんですか!?」
「なぁーに、お客さんに並ばれただけだ・・・!!」
「え?」
ブオーン、パッパッパッ!
車内がライトの光で真っ白になる。
「な、なにが!?」
「手すりから手を離すな!」
罵声に合わせて、車が右へと急カーブする。
それでやっと、私も理解した。
「なっ・・・!?」
(並ばれた!?)
窓の外を見れば、追ってきていたはずの黒い車が隣を走っていた。
「獅子島さん!と、隣に敵の車が―――――――――」
「すぐに引き離す―――――――――」
伝えれば、みけんにしわを寄せた獅子島さんが、アクセルを強く踏み込む。
ギュワァァァ――――――――――ン!!
(い、いやぁあああああああああ!?)
少し追い越したと思えば、追いつかれ。
追いつかれたチオ思ったら引き離し。
均衡(きんこう)の取れた状態で道路を走り抜ける2台の車。
完全なカーチェイスだった。
「し、獅子島さん!」
もはや、右通行も左通行も関係ない。
道路という名のステージを自由に走っていた。
「これ、対向車が来たら――――――――!?」
「危ないが、なんだ?」
落ち着いた口調で言いきる図太さ(ずぶとさ)。
あまりの堂々とした態度に、私が間違ってるんじゃないかと思ってしまう。
〔★恐ろしい錯覚だ★〕
車二台分しか通れない道を、横並びになる私達と黒い車。
冷や冷やしながら対向車を気にしていたら言われた。
「学習しろ、凛道。」
「は!?え!?なにを!?」
「規則を守っても、命を落とすことがあると。」
その言葉に合わせて、右側にいた私達の車が動いた。
獅子島さんが動く。
ギュワン!
「え・・・・!?あ・・・・!?」
前へと飛び出すと、道路の中央で車が横を向く。
ギュギュギュ―ン!
「あああああああああ!?」
カーブで車を、道路の内側から外側へと滑らせる曲がり方。
「ドリフト!?」
「ほぉ、知ってるのか?」
〔☆良い子のためのワンポイント解説☆〕
ドリフト:車のタイヤが滑っている状態で、積極的に車体の向きを変えたりして、車をコントロールすることだよん♪