彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)



「やれやれ、おしゃべりが過ぎたおかげで、面倒なことになったな。」

「まだなにか起こるんですか!?」

「なぁーに、お客さんに並ばれただけだ・・・!!」

「え?」





ブオーン、パッパッパッ!




車内がライトの光で真っ白になる。





「な、なにが!?」

「手すりから手を離すな!」





罵声に合わせて、車が右へと急カーブする。

それでやっと、私も理解した。






「なっ・・・!?」

(並ばれた!?)






窓の外を見れば、追ってきていたはずの黒い車が隣を走っていた。




「獅子島さん!と、隣に敵の車が―――――――――」

「すぐに引き離す―――――――――」




伝えれば、みけんにしわを寄せた獅子島さんが、アクセルを強く踏み込む。






ギュワァァァ――――――――――ン!!


(い、いやぁあああああああああ!?)




少し追い越したと思えば、追いつかれ。

追いつかれたチオ思ったら引き離し。

均衡(きんこう)の取れた状態で道路を走り抜ける2台の車。

完全なカーチェイスだった。





「し、獅子島さん!」





もはや、右通行も左通行も関係ない。

道路という名のステージを自由に走っていた。




「これ、対向車が来たら――――――――!?」

「危ないが、なんだ?」





落ち着いた口調で言いきる図太さ(ずぶとさ)。

あまりの堂々とした態度に、私が間違ってるんじゃないかと思ってしまう。



〔★恐ろしい錯覚だ★〕



車二台分しか通れない道を、横並びになる私達と黒い車。

冷や冷やしながら対向車を気にしていたら言われた。





「学習しろ、凛道。」

「は!?え!?なにを!?」

「規則を守っても、命を落とすことがあると。」





その言葉に合わせて、右側にいた私達の車が動いた。

獅子島さんが動く。




ギュワン!



「え・・・・!?あ・・・・!?」






前へと飛び出すと、道路の中央で車が横を向く。







ギュギュギュ―ン!



「あああああああああ!?」







カーブで車を、道路の内側から外側へと滑らせる曲がり方。





「ドリフト!?」

「ほぉ、知ってるのか?」




〔☆良い子のためのワンポイント解説☆〕
ドリフト:車のタイヤが滑っている状態で、積極的に車体の向きを変えたりして、車をコントロールすることだよん♪





< 136 / 715 >

この作品をシェア

pagetop