彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
どんな状況でも動じない獅子島さんの態度には、すごいと思う。
冷静な対応に、従おうとは思う。
思うけど・・・
「うわぁーん!どうせなら、瑞希お兄ちゃんがいい!飛び越えるなら瑞希お兄ちゃんと一緒がいいよぉ~命がかかってるのに~!」
「黙れ、ブラコン。お前も4代目総長なら、覚悟を決めろ。」
なげく私を獅子島さんが一喝(いっかつ)する。
「これが終われば瑞希に会える。そう思えば、頑張れるだろう?」
「うう~~~!わかりましたよぉ!!お願いしますね、獅子島さんっ!!?」
「わかればいい。手すりにつかまり、口をしっかり閉じろ。この場合、死ぬ原因になるのが、舌をかみ切ることだからな。」
「~~~~!!?」
具体的な説明を受け、口をしっかり閉じる。
(――――――――瑞希お兄ちゃん!!)
同時に、目も閉じて祈る。
(どうかどうか、神様!良い子にしてますから、瑞希お兄ちゃんに会わせてください!生きて愛しい人にぃぃぃ・・・・!!)
〔★凛の本気の神頼み★〕
「―――――――――ゆくぞ!!」
本日2度目の獅子島さんの大声。
ブァアアアアアアアン!!
(きゃあああああああああああああ!?)
閉じていた眼が、振動で開く。
目に映ったのは、ガードレールを飛び越える日産ノートの姿。
ツバサのない鉄の塊が飛んだ。
――――――――――キッキッキー!
「え!?」
ガクっ!!
飛んだと思ったら、車が前に傾いた。
そして・・・
ズッ!ザザザザザザーン!!
「あっれぇぇぇぇ!?」
ガードレール下の傾斜を加速してすべっていく。
(な、なんで!?飛んだんじゃなくて・・・・・・・・・降りてる!?)
ギュワッ!ワッ!
獅子島さんのハンドルが規則的に動く。
ジグザグに車を揺らしたと思ったら、ドスン!と車体がゆれ、車がまっすぐになった。
「あ・・・!?」
「フン、誰が飛ぶか。」
獅子島さんがそう言った時、私達を乗せた車は川沿いの砂利道を走っていた。
「獅子島さん・・・これはいったい・・・・?」
「フェイントだ。あいつらも、俺があそこから飛んだことがあるのを知っていたから、ワナを張っていたらしい。」
言われて見上げれば、着地すると思われた地点に人が群がっていた。
追いかけていた車も、私達が降りた場所で止まってる。