彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
「ジュースで水没とか、シャレになんねぇなぁ~・・・あーあ、これ皇助行きだぜ?」
受け取ったリモコンを見て、瑞希お兄ちゃんが笑う。
ここに帰ってきてからの初めて見せた素の笑顔。
それにつられて声をかけてしまった。
「な、直りますか?」
私の問いに、極上の笑みで彼はうなずく。
「皇助だからな。ほら、俺らも中に入ろうぜ?」
そう言いながら私の肩を抱くと、獅子島さんの車に続いて車庫に入る。
そして、もう一度車庫のリモコンを押せば、シャッターが閉まっていく。
車庫が閉じるのと、獅子島さんがエンジンを止めて車から降りるのは同時だった。
「皇助を呼び出す。車の内装を直さんとな。」
「見た目は、そこまで重傷じゃなさそうだけどなー?」
「馬鹿者。傷が入った時点で物損だぞ?その上、内側から汚しおって・・・!」
「獅子島さん・・・」
「本来ならば、ケツの毛を抜いてでも修理代と精神的苦痛を与えて保障させるものを・・・!!」
そう語る眼は、人でも殺しそうなくらい恐ろしい。
〔★伊織の機嫌が悪くなった★〕
「瑞希お兄ちゃん、獅子島さんが怖いです・・・」
こそっと、彼の耳元でつぶやけば、同じような声の大きさで答えてくれた。
「だろうな。伊織にとって、車は大事なもんだからな~」
「バイクよりもですか?」
「族を引退してからは、車がメインで使ってるからなぁ~外と中を汚されたのが嫌なんだろう。」
「ご自身も汚れてますが、それは・・・?」
「嫌に決まってるだろう?」
こちらの会話が聞こえた獅子島さんが舌打ちしながら言う。
〔★地獄耳だった★〕
「放置するべきではなかったな。奴らの財布を丸ごと頂けばよかった・・・!」
(それ、強盗になるんじゃ・・・?)
そうは思ったけど、口には出せない。
「皇助め!でやがらねぇ・・・!今日は休みだろうがっ・・・!?」
なによりも、スマホを出して連絡をしだしたので口出しをしてはいけないと思った。
「とりあえず、店の方へ行こうぜ、凛。」
「あ、はい。」
そんな眼鏡の先輩から避難するように、瑞希お兄ちゃんが私を誘う。
言われるまま大人しく従う。
その道中で私を見ながら瑞希お兄ちゃんは言った。