彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
「ツーリングに行って、海に入って、風呂につかって~うまいもの食いたいよな?」
「っ!?」
そう語る彼の手が、なぜか私の太ももをなではじめる。
「魚もいいけど、やっぱり肉がいいなぁ~」
「あ・・・」
(神様、これは拷問こみのご褒美ですか・・・・!?)
振り払えなくて、どうしていいかわからなくて、動かなくなる。
好きな人に触られて、嬉しくないわけじゃない。
(バレたらどうしよう・・・!?)
胸にだけは絶対来ないようにと、全力で両手を絡める。
「凛、肩はばも小さいな。」
「ふえ!?」
ふいに、瑞希お兄ちゃんの声のトーンが変わる。
ぎこちなく振り返れば、興味津々な顔で私を見ていた。
「思ったより、筋肉もついてないな・・・まぁ、鍛えればつくだろうけど・・・」
「あ・・ん・・・・」
私の足を触っていない手が、肩をなでる。
ドキドキしたけど、気持ち良くも思えた。
前に感じた、不思議なしびれだった。
なんとか、我慢しようと、気を紛らわせようと声を出す。
「そ、そんなこと・・・」
「ははは!そうだな。成長期だから、これからだよな?」
耳元でそうささやきながら、肩から離れた手が浴室の底についた。
そして動かなくなる。
「極楽、極楽♪いい湯だなぁ~凛?」
「うん・・・」
本当に、天国へ召されるんじゃないかと思った。
というよりも。
(こんなに密着して、どうして気づかないの・・・・!?)
女子だということに!!
もしかして彼は、気づいているのだろう?
(気づいていて、私を試そうとしてるの・・・・!?)
「瑞希お兄ちゃん。」
浴室の底にあった彼の手を握る。
「ん?」
「あの!本当は、僕のこと・・・・!」
「凛?」
確かめたい。
でも、怖い。
違った時の言い訳できる?
いいえ、もし知っていてここまでするなら・・・・
「僕のこと・・・・・・好き?」
熱くなる身体で聞く。
私の言葉に、態度に瑞希お兄ちゃんは――――――
「はあ?好きだっていつも言ってるだろう?・・・寂しいのか?」
キョトンとしながら即答する。
同時に、私が握った手を握り返してくれた。
「寂しいのか、凛?」
「あ・・・」
私へと顔を近づけながら、今度は彼が聞いてくる。
「さ・・・・寂しいって言うか・・・切ないって言うか・・・・」
真面目な瑞希お兄ちゃんの問いに、無意識のうちに彼の身体へとその身を押し付ける。
「なに言ってんだよ。寂しいんだろう?」
それに応えるように、彼が優しく私の肩を抱く。