彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
「ホント、大丈夫かよ、凛?まだ、ぼーとしてねぇか?」
「あ!ほ、本当に、なんでもないですよ~?すみません!」
「謝るなって。謝る前に、調子が悪くなったら、いつでも言えよ?凛のことだから、すぐ我慢しちまうんだからよー」
「ちゃ、ちゃんと言いますよ!瑞希お兄ちゃんこそ、無理しちゃダメですよ!?ちゃんと言って下さいね?」
「はいはい!わかってるよ、こいつめぇ~」
「はわわ!?」
ニヤリと笑うと、ほっぺをプニッとつままれる。
(ああ・・・・こうしてると、まるでバカップルみたいで幸せ・・・)
〔★実際は、仲良し兄弟だ★〕
優しい彼の優しさは、いつも私をいやしてくれる。
そんな好きな人に、つくしたいと思う。
「一緒に頑張ろうな?」
「はい!頑張ります!二人で一緒に~!」
そう、2人だったらよかったんだけど――――――
「いつまでじゃれあっている、小動物共。」
ズシッ!!
「重い!?」
その声に合わせ、頭の上になにか乗った。
「早く道具を運べ、凛道。」
「し、獅子島さん・・・!」
そう言いながら、コーヒー豆の入った袋を私に押し付けたのはメガネの先輩。
「おい、伊織!凛の頭に物を乗せるな!首がおれる。」
「フン、これぐらいでヘタレてどうする?瑞希も早く机を設置しろ。テーブルクロスが置けん。」
「わーてるよ!」
「俺まで手伝いに来て正解だったな。お前ら2人では、仕事にならん。」
そうなんです。
土曜夜市の屋台、お客さんが多く来ることを見込んで、今年から3人体制になったのです。
私も瑞希お兄ちゃんも、毎週入ることになったんだけど、3人目は週替わり。
「凛道。プラスチックカップの取り扱いには気をつけろ。キレイな手で触らんと、食中毒問題だからな・・・!?」
「はい・・・!」
よりによって、一番怖い獅子島さん。
前回のカーチェイスで、仲良くなれた気がしたけど、やっぱりまだ怖い。
「それもそうだな。凛、さわる時はこの薄手のビニール手袋を使えよ?」
「瑞希お兄ちゃん。」
「金のやり取りは伊織がする。凛は客引きと、俺の助手すればいいからな?」
「はい・・・♪」
そう言って笑いかける彼の顔で、お口直し。
(これで二人っきりなら、どんなにいいか・・・)
車から荷物を下ろしながら、少しだけがっかりする。