彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
テストを終え、帰るために廊下へ出た。
「うわっ!でけ!?」
「だれだあいつ?」
「ああ、転校してきた・・・」
「F組だっけ?」
(ん?)
前方で聞こえたリアクション。
見れば、生徒の群れの中でもわかるぐらいの大男が歩いてくる。
(ヤマト・・・)
彼の教室は、こことは違う棟にある。
間違っても、ヤマトが帰宅する経路に私の教室の前を通ることはない。
(それがここを通るということはー・・・・)
彼は私を見ることなく通過する。
ただ、口元がニコニコしていた。
すれ違った瞬間、ニッ!と口の両端を上げて笑う。
(なにかあったのね。)
帰るふりをして、たまり場へと向かう。
気配を消すように、慎重に進む。
人気のいない、第二理科室の扉を素早く開けて閉める。
「うははは!待っとったでぇー凛!?」
思った通り、ヤマトはそこにいた。
言葉通り、私を待っていたようだった。
この時期に、ヤマトが私を呼ぶということは――――
「どうしました?明日のテスト対策のためのプリントは、渡しているでしょう?」
「それとは別件やねん!」
教壇の後ろに座っている男子の隣に、私も静かに腰を下ろす。
「昨日はお疲れ!」
「ああ、やっと誤解が解けて清々したよ。なにかあったの?」
「あ、気づいてくれたか!?」
「そういう取り決めをしたでしょう?」
何かあって、緊急で学校で話さないことが出来たら、お互いの教室の前を通り過ぎる。
「うはははは!自分、『凛道蓮』の携帯、家で使えんで不自由しとるやろ!?」
「え!?なんで、ヤマトが知ってるんですか!?」
「うはははは!実は、瑞希はんに頼まれてのぉ~!これを凛に渡したってやって、預かったもんがあんねん!」
「瑞希お兄ちゃんが、私に?」
「うはははは!これや!」
そう言って差し出してきた箱。