彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
1人、ダメージを受けている私に気づくことなく、大人2人の会話は終わりに近づいていた。
「まぁ、だいたい、こんなところか?あとは前日に話そうぜ、サナちゃん!」
「わかりました、会長。俺のところの準備が終わったら、手伝いに行きますんで。」
「いつも悪いな。今年は、屋台の数も増えるし、他所から出店するところも多くてな。年寄りばっかだから、正直、そうしてもらうと助かるぜ。」
「気にしないでください。屋台やらせてもらえて、俺が助かってますから。今日はお時間頂き、ありがとうございました。」
「ああ!頼りにしてるぜ、サナちゃん!」
そう言って瑞希お兄ちゃんが頭を下げたので、話が終わったのだと察する。
チョコチョコと、ゆっくり移動して彼の背後に移動する。
その途中で、会長さんと再び目が合う。
(こういう時は、愛想笑い。)
ニコッと笑えば、おじいさんもニカッと笑った。
「よぉ、坊主!凛ちゃん!待たせちまって、ごめんな~?」
「いいえ、お仕事ですから、とんでもないです。どうか、瑞希お兄ちゃんをよろしくお願いします。」
瑞希お兄ちゃんの背後から顔を出し、ペコッと2度目になる90度でお辞儀をする。
「くぅ~礼儀正しい良い子だな!うちの孫らにも、見習わせたいぜ~!」
これに感心するようにいう会長のおじいさん。
「よし!良い子で待ってたちっちゃい凛のために、アイス買ってきてやる!」
「え?でも!」
「ジジイにおごらせろって!瑞希の分も買ってきてやるから、待ってろよ!」
「え?いや、会長、俺までしてもらうのは~」
「遠慮すんな!少し前まで入院してた奴がよ~?熱中症舐めるなよ!?」
「熱中症だったわけじゃないんすけど・・・」
「いいから、2人共そこいろ!」
そう言って釘をさすと、足早に私達から離れるご老人。
「すぐ戻るからな~!」
「すみませーん、会長!ごちそうになります!ほら、凛も!」
「あ、ありがとうございます、会長さーん!」
「任せとけ!」
威勢良く笑うと、おじいさんは僕達に手を振る。
そして暑い中、アイスを買いに行ってくれた。