彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
鋭い相手に見惚れていれば、ニヤリと笑ってから瑞希お兄ちゃんは言う。
「髪、ウルフにしたのか?」
「あ、はい。モニカちゃんが、涼子ちゃんを送り届ける前に――――・・・」
「てことは、女の子を待たせたってことか?」
「す、すみません!僕を探して・・・この暑い中を、走り回ったりしたみたいで・・・。涼しい場所で休んでもらった方が良いと、モニカちゃんも・・・」
「その通りだな。」
ウェーブしてる髪を触りながら言う瑞希お兄ちゃん。
その手付きに、ちょっとドキドキする乙女な私。
「いいよな、これ。」
「あ、ありがとうございます!」
「飢狼らしくて、やる気十分じゃねぇーか?」
そう言った目が、光った気がした。
楽しそうに、凶器に満ちたような瞳。
怒っているのか、笑っているのかわからない表情。
それにやられちゃった。
「もちろんですよ・・・喉笛に噛みついてきます・・・!」
トキメキながら、マスクの下でニヤリと笑う。
「悪い子だ。」
そう言って、もう一度私の耳元でささやいてから離れる。
それを口惜しいと感じながら、私も動いた。
バイクに乗るのに合わせて、瑞希お兄ちゃんがガレージを開けてくれた。
「今夜もショートか?ロングは嫌いか?」
「走るだけならいいですが、戦うなら、邪魔にならない方が良いです。」
「やる気まんまんだな。」
笑う彼の笑顔にうなずく。
気持ちを切り替えて、単車にまたがる。
バウン!!
エンジンをふかす。
「行って来い。龍星軍4代目総長?」
「ちゃんと帰ってきますよ、初代総長様?」
ガレージの入り口にもたれかかりながら言う彼に、手を振って車道へと出た。
バウン、ウウウウ―――――――――ン!
ミラーの中の瑞希お兄ちゃんが小さくなっていく。
ジッと私を見たまま、両手を組んだまま見送ってくれた。
それに愛しさを感じながら気持ちを切り替える。
「さてと・・・・・・無事でいて下さいね、秀君、悠斗君?」
願いを口にしながら、人気の少ない道路を疾走した。