彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
みんな私を可愛いと言ってくれるけど、それは『男のことしての可愛い』という意味。
(仮にも、暴走族の総長なのに・・・・)
言う人はみんな、悪気があって行っているわけではなさそう。
だけど、ヤンキーとしてそれに笑顔で応じるのはどうなんだと・・・円城寺君辺りはうるさい。
でも、接客は笑顔が肝心だし、ちゃんと公私の区別はつけてるし~
毎回そう言われて反応に困るけど――――――――
「本当に、凛ちゃんは良い子だね瑞希君?」
「そーなんですよ、可愛い奴でしょう?」
(か、可愛いと!!?)
多少、納得できない気持ちにもなったけど、すぐにその思いは消し飛ぶ。
なぜなら、彼が同意してくれるから。
「気は利くし、良く働いてくれるし、俺にはもったいないぐらいいい弟なんですよ。」
(わ、私がもったいないって・・・!?)
大好きな相手にそう言われたら、だましている後ろめたさごと、モヤモヤが吹き飛ぶ。
瑞希お兄ちゃんが、私を紹介する言葉にときめく。
(私の望みは、瑞希お兄ちゃんに好かれること。そのお役に立ててるなら―――――――――!!)
お客さんと、楽しそうに話している瑞希お兄ちゃんを見ていたら、自分の気持ちなんてどうでもよくなった。
瑞希お兄ちゃんが笑顔でいてくれるなら、私はそれだけで幸せなのだから。
「またくるよ、凛ちゃん。おやすみ。」
「はぁーい!おやすみなさい、角田様♪」
「瑞希君も、またね?」
「こちらこそ、またのお越しをお待ちしております。」
最後のお客様を瑞希お兄ちゃんが、入口まで見送る。
下げた頭を上げた彼が、お店の中へと戻ってくる。
「ふー!おつかれさーん!」
ドアを閉め、そう言ったところで『終了』となった。
「お疲れ様です、瑞希お兄ちゃん!」
「ああ、凛もお疲れ。今日も助かったぜ。ありがとうな。」
トコトコと一直線に駆け寄れば、瑞希お兄ちゃんが頭をなでてくれた。
「よしよし、良い子だ。」
「わーい!」
〔★完全に動物扱いだ★〕