笑って。僕の大好きなひと。
……たしかにわたしは、バカだよ。
ガキで、無責任で、わがままで、弱虫で、肝心なことは何も言えなくて。
だからこんな自分が、大嫌いで仕方ないんだよ。
嫌いだけど必死で毎日生きてきて、変えられない現実の中、我慢してあきらめてきたんだよ。
こんなわたしの本当の気持ち、わかってくれる人なんてこの世にはきっといないんだ。
やるせない気持ちがこみ上げて、スマホを地面に投げつけた。ガチャン、と音がして、たぶんヒビが入ったっぽい。
「出逢わなきゃよかった……」
翼と美那子のいる世界から自分を消してしまいたい。そう思った。
親の声が届かない世界に隠れてしまいたい。そう思った。
ちょうど、そのタイミングだった。
「乗らないんですかー?」
間延びした声が、少し離れたところから響いた。