笑って。僕の大好きなひと。
荷物を先に投げ入れ、続いてフェンスをよじ登る。なんだか、わんぱく坊主になった気分。
森の中は光があまり届かないせいか、雪がうっすらと残っていた。
「えっと、どっちだったかな」
行き方なんて当然覚えているわけがないし。
ええい、とりあえず進んでしまえ! 日没まで少しは時間があるし、何とかなるさ。
妙な高揚感に後押しされ、わたしは歩を進めた。
***
――が。そんなノリは希望的観測に過ぎなかったと、痛感したときには遅かった。
歩けども歩けども、目的の場所は見えてこない。それどころか、昔遊んだ小川など目印になるものすら一向に現れる気配がなかった。
もうどのくらい歩いただろう……。かなりの距離を移動したはず。雪のせいで足がよけいに疲れて、ふくらはぎはパンパンだ。
わたしは立ち止まり、来た方向を振り返った。
そこには当然、道なんてものはなく、樹木が不規則に立ち並んでいるだけ。
360度、同じような景色に囲まれていることに気づき、急に背筋がゾワッとした。