笑って。僕の大好きなひと。
派手に転んだその場所は、傾斜がきつかったらしい。
ザァッ、とか、バキバキッ、とか、いろんな音を響かせながら、わたしは1メートルほど下の岩場に落下した。
「痛……」
思わず声をもらしたものの、折れた木の枝がクッションになったおかげで衝撃はそれほど強くなかった。
むしろ、痛みより苦しさの方がひどい。走りすぎて肺がしびれたようだ。
わたしは倒れたまま、うつろな瞳に空を映した。もう、立ち上がる体力も気力もなかった。
ここは岩場になっているおかげで、見上げた視界は少しだけ開けている。深い湖のような色をした空に、いつのまにか星が瞬いていた。
そうしていると、意識が徐々にぼんやりしてきて、うるさい風の音も気にならなくなっていった。
……ああ、わたし、死ぬのかな。妙に納得した気持ちで、そう思った。
ほんの七日間だけ消えてしまおうと思ってたのに。もう完全にここで終わるのかな。
ていうか、七日間の最後の日ってわたしの十六歳の誕生日じゃん。よりによってこんなタイミングかよ。
――『十五、十六の頃なんて、人生で一番いいときなんだぞ』
そんな風にまわりの大人たちは言うけれど、わたしには、ちっともそう思えなかったよ。
毎日が息苦しくて、自分が何をすればいいのか、わからなくて不安で……。
「ふふ……」
涙がにじむと同時に、なぜか笑いも漏れた。こんなときに笑うなんて我ながらおかしいけど。
でも、やっとあの日々から解放されるんだと思ったら、少し救われる気がした。