笑って。僕の大好きなひと。

この町でわたしは、みんなからたくさんのことを教わった。たくさん助けてもらった。

ここからは、自分ひとりだ――。


「本当はわたし、昔みたいに家族みんなで仲良くしたい。お父さんのことも、お母さんのことも、やっぱりわたしは大切だから……」


たとえ恥ずかしくても、素直な気持ちをぶつける勇気。これは、トモくんに教えてもらったこと。


「今までのわたしは、お父さんたちに背を向けてたと思う。でもそれは、嫌いとかどうでもいいとかじゃなくて、どうすればいいのかわからなかったから。本当は向き合いたいのに、怖くて、すねてたの」


相手や環境を責める前に、自分の気持ちは何なのか。向き合う大切さを教えてくれたのは、実里さんと旦那さんだ。


「でもやっぱり、もうあんなのは嫌だよ。笑い合える家族がいい。くだらないテレビで笑ったり、お父さんの寒いジョークに突っこんだり……そういう家に、もう一度わたしは帰りたい」


どんなに絡まってしまっても、親子の糸はつながっている。それを信じさせてくれたのは、おじいちゃんだった。

そして――。
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