好きって。
「おはよー悠スカートだ!」
「美咲が履いて来いって言ったんじゃん」
「うん!足綺麗なのにもったいないなって思って!」

綺麗なんかじゃないよ。

「待ち合わせどこだっけ」
「時計塔の前ー」
「あ」
「太一と瑞希早いね!」
「いや、五分前行動しろってよく言うから」
「なにそれー小学生みたいー」
「あ、悠スカートじゃん。新鮮だな。」
「あんま見んな」
「可愛いじゃん」
「…きも」
「なに?不機嫌?」
「悠、どーしたの?」
「ごめん、なんでもないから」

みんな気を使って私のこと褒めてくれる。
ザワザワがおさまらない。
嫌だな。
楽しくいたいだけなのに。
可愛いとか、好きとか…。

「悠、体調悪い?」
「なんでもない」
「でも、なんか変だよ?」
「…瑞希は、好きな人っている?」
「え!?あ、えっと…うん。」
「そっか。じゃあ、私が変なのかな。」
「どうして?」
「誰かを好きって分からないから。私はみんな一緒に好きだなって思うから。」
「…悠は、僕が誰を好きか分からない?」
「え、うん。聞いたことないし。知ってる人かどうかも分からなくない?」
「そっか、そうだね。」
「瑞希の好きってなに?」
「その子が好きで自分を変えたいなって思ったんだよね。」
「自分を変える?」
「うん。僕が守りたいなって。」
「そっか…」
「悠が一年のとき太一に髪の毛下ろしてるといいなって言われて、下ろしだしたの知ってるよ。」
「そんなことあった…な。うん、あった。」
「だから僕、いつも嫉妬してた。」
「ん?」
「悠と太一。」
「うん」
「お似合いだったから」
「ないな」
「あったんだよ。」
「瑞希の好きな人って美咲でしょ」
「…はぁ」
「だ、黙んないでよ」
「わざと言ってるようにしか思えないよ。」
何かに呆れて瑞希は歩いて行っちゃった。
だって、認めたら…。
怖くて話しそらして…ごめん。


その後、ずっとギクシャクしてた。

瑞希は私と目を合わせてくれなくなった。
「なんかあった…?」
「…もうわかんない」
美咲が頭を撫でてくれる。

「嫌われたかも」
「誰に?」
「瑞希」
「ないと思うな」
「だって、認めたらダメだから」
「悠、ちょっと来て」
「み、みず…」

瑞希に引っ張られて太一の前に連れて来られた。
「悠は太一のこと好きなんでしょ」
「…」
「…は?」
美咲が目を見開く。
「う、嘘…え、だって」
「み、美咲違うよ」
「じゃあ誰が好きなんだよ…!」
瑞希が怒った。

私は好きって分からないって、普通じゃないって言われてるみたいで。
「ど、どうしてみんな変わっちゃったの…!わた、私は…!」
前みたいに駄弁って、遊びに行って色んなもの食べたいだけ。

「違うよ、悠。」
「なにが」
「瑞希は悠のこと、ずっと好きだったよ。」
「や、やめて」
「瑞希ずっと俺に悠の可愛いとことか言ってたよ。」
「聞きたくない」
「瑞希の気持ち考えないと。」
「わ、わかんない」

瑞希が私の腕を引っ張る。
「好きです。悠のことが。」
「や、やだ」
「やなの?嫌い?」
「ちが、好き」
「好き?」
「わかんない…わかんないの…」
「僕の顔見て」
「ッ……」
「そう、ドキドキしてるよね。」
「してない」
「してるよ。」
「認めて」
「やだ」
「だめ」
「や」
瑞希の顔が近い。
熱い、熱い…。
「やめ、みず…ッ」
何回も何回も近づく。
「認めた?」
「た!た、から!!」

ど、ドキドキ?これがドキドキ?
や、やだ…。
「苦しい…」
「悠、深呼吸して落ち着いて」
「うん、う、うん」
深呼吸…深呼吸…。
どうしよう、好きなんだ…どうしよう。
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