いつもの場所
2. 初恋


「ごめん、こんな時間に電話して。」



電話の向こうでネムがすすり泣く。



だいたいの見当はついたがすかさず凛々子は



「ちょっと大丈夫?!どうしたの?!何があったの?!」と質問を捲し立てた。



「なおちんがさ…別れようって」



「え?なんで?今朝だって『今日はデートなんだ~』ってメールくれたじゃん!」



「うん。そうなだけど帰りに…別れようって」



「だからなんでよ?!理由は聞いてないの?!」



「きい…て…ない。」



「今からそっちいくわ」



凛々子は電話を切ると一目散にネムのマンションへ向かった。



本当ならネムが声を荒げたくなるだろが、感情を露にしない彼女はただただ別れを受け入れたのではないかと、なぜか凛々子が苛立ちを覚えた。



ピンポーン



そこには魂の抜けたようなネムが玄関に座り込んでいた。



どうやら帰宅してから部屋にもあがらずずっとそこに座り込んでいたようだ。



「一旦落ち着こう。まずこれ飲んで。」



と凛々子はネムの好きな紅茶花伝を差し出す。



「ありがとう」



か細い声でそういうと、立ち上がりソファーにもたれた。



「ネム…ちゃんと聞かせて?」



電話で声を荒げたことに反省したのか優しい口調で凛々子が問いかける。



「朝から水族館にいって…夕方はいつもの場所にいて…それから家まで送ってくれて…それから……」



「なら、ついさっきこの家の下で告げられたってこと?」



こくりと頷くネム。



「理由は?」



「分からない…」



とかすれた声を振り絞るようにネムは答えた。



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