いつもの場所

それから凛々子はキューピットを成し遂げ、ものの1週間ほどで2人は凛々子の手助けなど不要になった。彼らは本格的な夏を迎えようとする頃には既に指を絡めるような手の繋ぎ方に変わっていった。



「なんか若林くんといると嫌なことすべてを忘れられるの~毎日が楽しくて仕方ないわ」



そんなノロケ話を一日に3度もされるとさすがに羨ましさも軽減する。



2度目のおかわりコーヒーが運ばれたあと、さらにここに滞在すると言わんばかりに追加のポテトを注文し、デニーズの一角はネムを中心にハートのオーラで包まれているようだった。



「結局さ、遠くのバラよりちかくのなんちゃらって言うように、側にいてくれる人が自分の一番なのかもね」



凛々子の発言に朱美と絵里はポテトを頬張りながら頷く。



とにかく今はネムが幸せそうで何よりといった様子で3人はネムの話に耳を傾けた。



「で、あんたはまたあんな男と会ってるの?いい加減目を覚ましなよ。」ノロケ顔だったネムも目を細め絵里に一喝した。



「だって…でもどうすればいいってのよ…」



歯切れの悪い絵里にはすでに愛想が尽きかけている3人でもあった。



「なに、またなんかあったの?」と朱美は話に割って入った。



「なんかあったもなにも、また競馬でお金使い果たした斎藤にお金貸したらしいよ」ネムは嫌みたっぷりに答えた。



いつものことか…と不毛な恋愛をしている絵里に対してすでに言葉もなかった3人はまた、知りつくしている近況をさらに語り合った。
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