いつもの場所
「はい?!ど、どうしたの?!どうやってきたの?!」



「いや、歩いて。俺は車がないし、いつもネムに迎えに来てもらってて悪いと思ったから。」




車だと20分程だが、歩けば一時間以上かかる距離だというのに、ネムはただごとではないと急いでマンションを駆け降りた。




「若林くん、どうしたの?!」



「いや、ネムずっと変だったから…」



「変?そ、そうかな?」



心当たりがあったのがバレバレな表情をするネム。



「実は俺、前に凛々子先輩に聞いてたんだ。ネムには長く一緒にいたヤツがいるって。今日ネムの様子がおかしかったのはそいつの事なんじゃないかって…だから、つい…気になって」



『凛々子ぉー!!話してたんかーい!!』と心で叫ぶネムだったが、彼女には今目の前で自分を包んでくれるこの若林が大切でならない。確かに直樹からの連絡で動揺はしたが、今はこの人と一緒にいたいと心から思っていた。



「聞いてたんだ。うん、そういう人が居たのは本当だよ…」



「やっぱり…ならずっと今日の様子がおかし…」



ネムは若林が全て言い終わる前に強く言い放った。



「違う!違うってば!…確かに直樹…その元カレから連絡が来て動揺はした…けど、今は日本にいる訳じゃないし…」



「じゃあ、そいつがもし日本にいれば何だって言うんだよ!」



「いや、そういう意味じゃなくて…」



そういってネムは目に涙を浮かべた。



それをみた若林は焦るように、せがむようにネムの両手を握りしめた。



「ごめん…ついキツく言ってしまって…。そいつとは、何もないんだよな?」



「当たり前だよ。今は若林くんしかいないんだから…」



そういってネムは若林にそっと、強く抱き締めらるた。



そのまま2.3分経過しただろうか。



少し落ち着きを取り戻したネムに若林はこう言った。



「ネム…一つだけお願いがある。」
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