いつもの場所
9. 涙



「お願い…?」



「うん…」



「どんなこと?」



「こんなこと言ったら嫌われるかもしれないけど…」



ネムは「そんなことない」と言うように首を横に振った。



「その…元彼とは今も連絡取ってるの?」



「ううん、もうずっと取ってなかった。」



「そうか…」



少し沈黙の末若林はこう切り出した。



「元彼に、『彼氏できた』って言ってもらえない?」



想像もしない若林の言葉に驚きはあったものの、とにかくネムも若林を離したくない一心で



「うん、分かった。」



と答えた。



それから何の躊躇もなく直樹にメールして、ネムは彼をアパートまで送った。



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