いつもの場所
13. 二つの別れ



ネムがセントレアに着くやいなや、空に太陽が昇り始めた。



電工掲示板が動き出した頃、エチオピアからの便を探した。



その頃、凛々子も若林に部活後に時間を作るように声をかけた。



「おはようございまっす。話っすか…わかりました。」



その日の若林はいつものノックの練習もボロボロだった。



「若林…私が二人を取り持ったのに申し訳ないけど…ネムは……もう一緒には居られないって…」



若林の溜め息と沈黙がどれほどの気持ちかを物語った。



「若林、ごめんね。」



「ハハッ、何で凛々子先輩が謝るんすか。」



と自虐的に笑った。



「ネムは…自分で別れ話をするまでもないってことっすね。」



「それは違う。きっとこんな薄情なやり方をすることで悪者に徹したんじゃないかな…」



「悪者か…どうせあの男の事ですよね…」



何も言えない凛々子をみて若林はネムが直樹のところへ戻ったと確信したようだ。



「ま、しゃーないっす。とりあえず走ってきます。」



そういってその日は陽が落ちるまで、何かをふっにるように走り続けた。



< 37 / 92 >

この作品をシェア

pagetop