いつもの場所
そして彼は今まで彼女に見せたことのないくらいの不機嫌な顔で店をでた。



だがそれとは裏腹に絵里はニコリと笑っていた。なぜなら2度目に裕也がお金を借りに来た時に『今日すったら明日仕事帰りに返しに行くから!』と約束したからだ。



明日も会える。



そんな約束がいずれ二人に悲劇をもたらすとは、このとき微塵も思わなかった。



機嫌が悪い裕也だったが二人は先週と同じく例の公園の駐車場に来ていた。



絵里はここがどんな場所であるか覚悟はしていたが、彼の機嫌の悪さからして今日はそんな雰囲気になるとは到底思えなかった。



先週と同じくタバコを吸いに外に出る裕也と、彼の好きなほうじ茶を買いに自販機へ向かう二人、このパターンがこれからずっと続くのかと思うと絵里は嬉しかった。



そしてまた同じタイミングで車へ戻ってきた。



「絵里…お前俺の事好きなの?」



ドキッとした一言に戸惑ったが即座に「当たり前じゃん」と答えた。



次の瞬間、おもむろに顎をつかまれ、心の準備もないまま半ば強引にキスをされた。
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