いつもの場所
3. 闇の幕開け
旅行の思い出も周囲には散々語りつくし、すでに過去のものとなり年が明けた。
賢太郎は以前にもまして朱美の実家で過ごす時間が増えた。再就職が内定したお祝いで訪れた韓国旅行から帰国したのち、すぐに食品会社での勤務が始まったのも束の間。
「君、食品会社には合わないなぁ。うちは清潔感がモットーなんだ。悪いが…」
と上司に告げられたのは、たった2週間しか働いていない賢太郎にとっては「あぁそうか~また探そう」と案外楽観的だった。
しかし朱美の優しさを覚えてしまった賢太郎には再就職活動という無報酬の労働が億劫だった。すでに前の妻からは何度も養育費の催促があったが、とにかく払う金がない。
とある晩、朱美が仕事から帰るとパトカーが家の前に止まっていた。何事かと急いで玄関を開けた。
「お母さん!なにがあったの?!」
「朱美…お帰りなさい。お父さんのお金がね…」
朱美はその事実を聞かされると、なぜか胸騒ぎがした。
同時に一仕事終えた警察が玄関から出ていくところであったが、いつもなら愛嬌の良い朱美であるがこの日は何も言わずにすれ違うだけだった。
旅行の思い出も周囲には散々語りつくし、すでに過去のものとなり年が明けた。
賢太郎は以前にもまして朱美の実家で過ごす時間が増えた。再就職が内定したお祝いで訪れた韓国旅行から帰国したのち、すぐに食品会社での勤務が始まったのも束の間。
「君、食品会社には合わないなぁ。うちは清潔感がモットーなんだ。悪いが…」
と上司に告げられたのは、たった2週間しか働いていない賢太郎にとっては「あぁそうか~また探そう」と案外楽観的だった。
しかし朱美の優しさを覚えてしまった賢太郎には再就職活動という無報酬の労働が億劫だった。すでに前の妻からは何度も養育費の催促があったが、とにかく払う金がない。
とある晩、朱美が仕事から帰るとパトカーが家の前に止まっていた。何事かと急いで玄関を開けた。
「お母さん!なにがあったの?!」
「朱美…お帰りなさい。お父さんのお金がね…」
朱美はその事実を聞かされると、なぜか胸騒ぎがした。
同時に一仕事終えた警察が玄関から出ていくところであったが、いつもなら愛嬌の良い朱美であるがこの日は何も言わずにすれ違うだけだった。