いつもの場所
20. 約束の時間



絵里は昨晩のカーチェイスを思い出しては、我を忘れたことに穴があったら入りたいほど恥ずかしかった。



今は午後3時。かおりとの約束の午後9時までまたまだ時間があったが、そわそわして訳もなく部屋をうろついた。



そんな時いつも彼女を癒してくれるのは愛犬のオロゴン。大型の土佐犬でおおらかなオロゴンはどんな時も絵里の味方だった。気分転換にといつもより長目の散歩をして気持ちを落ち着かせた。



午後8時、いつもの4人は絵里の車の中にいた。



「本当に…ありがとう。ついてきてくれるから心強いよ。」



「何いってるの、友達でしょ。」と3人は笑った。



「私たち離れたレストランでご飯でも食べてるから、気がすむまで話ておいでよ。」とネムがいうと、少し早めにかおるのバイト先の近くまで来ていた。



絵里は二股している彼氏の女と話し合うなんて自分の人生の歴史に刻まれようとは思いもよらなかった。そして緊張から「あの女が出てくるまで一緒に車にいて。」と懇願すると、3人は快諾した。



かおるのバイト先は『ビックエコー』というカラオケ店だった。既に約束の9時は10分程越えたところだった。



「遅いね…」と絵里が呟くと、「バイトだからってぴったりの時間には終われないでしょ~」と4人の中で一番早く社会人になったネムの言葉はやけに説得力があった。



「やっぱり気になるから、声かけてくる!ちゃんとくるように、って」



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