いつもの場所
21. 始まっていなかった別れ



絵里はメラメラ燃えるオーラで店を出た。凛々子とネム、朱美は誰も声を掛けられずゆっくり彼女についていった。恐らく昨晩の電話以降、かおるが裕也と話し合って、今この現状に至るのだろう。



一部始終をみていた3人は絵里が裕也に利用されていたと確信した。そしてあまりに酷い仕打ちに3人も裕也に対する怒りがこみあげた。



声がした方をふと振り返ると、バイト終わりのかおりの姿があった。絵里はすかさず彼女を追った。



「これは…ついていった方がいいかも!行こう!」



そう朱美が言うと2人も頷いた。



「ちょっとあんた待ちなさいよ!話は終わってないし、私と裕也くんはちゃんと付き合ってたわ。」



絵里はかおりに叫んだ。周りには大勢行き交う人がいるにも関わらず、そんなことどうでもよかった。



しかし無情にもかおりは無反応。それがさらに絵里の怒りに拍車をかけ、絵里は小走りで彼女に近づいた。



かおりも絵里を振り払おうとすぐ近くにあったボーリング場へ入った。そこは広々と騒がしい空間で、絵里が暴れようと中々周りには気づかれない様子だった。



そして2人を追う3人も駆け足でボーリング場へ入っていった。さすがに女同士だろうと殴り合いにでもなったら困ると焦っていた。



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