いつもの場所
3. 卑怯



「凛々子、落ち着けって!話ぐらいきいてやれよ。」



いくら友達の説得でも凛々子は聞く気にもなれなかった。



すかさず淳は凛々子の肩を押さえて座らせ、逃げ出せないように隣に座った。




「お前これは卑怯だろ。あんなメール1通でおわらせようなんて…俺は認めないからな。」



淳の言葉に武司が動いた。



「ま、あとは二人でじっくり話せよ。俺は帰るからな。」



そういって立ち上がろうとすると凛々子は小さく叫んだ。



「分かったわ。ちゃんと話すから、武司もここにいてくれる?でなきゃ帰るわ。」



武司と淳は気まずそうに目を合わせたが、武司はしぶしぶまた腰を下ろした。



「二人が親友なんてすっかり忘れてて、のこのこのここまできた私がバカだったわ。それに、こんなやり方するなんて…卑怯って言うのはお互い様ね。」



凛々子は目の前の武司と会話をしているように、淳とは少しも目を合わさなかった。



「俺も凛々子とは長くいたせいで、つい…嫌な思いもさせたりもしたけど…それは反省してる。」



「あら、ならごゆっくり反省してください。で?他に言いたいことは?私はこれ以上話すことはないわ。」



淳は凛々子に取りつく島も無く、こんなにも冷たい彼女を初めて見てうろたえた。



< 85 / 92 >

この作品をシェア

pagetop