いつもの場所
「凛々子、お前きついこというなよ。こうやって淳も反省してるんだから、少しは猶予をやれば?」



武司の言葉にもただ無言で首を横に降る凛々子を見て、3人はしばしの間無言になった。



「おい、淳。どっちにしろ今は何を言っても無駄だ。もう少し時間をあけて話し合えよ。」



武司の助け船によってとりあえずその場をしのいだ凛々子はすぐさま新しい彼、ルイに連絡をして一部始終を話した。



ルイは心配そうに「レッスンが終わったらすぐいくから、待ってて」と電話の声に、彼女は安らぎを覚えた。



凛々子にとっては初めての愛される恋愛で、胸がいっぱいという感覚に満ちていた。



彼女はまた夕方になればルイからの連絡が来るだろうと、まだ半日もすぎていないこの休日の疲れを癒すために部屋のソファーに横になった。まだまだ思い出の少ないルイとの写真を眺め、待受画面にでもしようかと携帯を握りしめていた。



窓がある壁にぴったりと背もたれが添うように配置されたソファーはとても居心地がよかった。しかし凛々子はこのソファーで淳と過ごした時間の長さもすっかり忘れていた。



ふと天井を見上げた拍子に『コンコン』と部屋をノックするような音がした。だが、明らかにドアの方からではなかった。



次の瞬間、凛々子は目を疑った。
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