いつもの場所
5. 招かれざる客



『また淳が来たらどうしよう…怖いな…』



凛々子がそう思った矢先、軽快な着信音が聞こえた。



彼女はその着信がルイからだとすぐに気付いた。



なぜなら、ルイからの着信音だけは他の着信とは違うものだったからだ。曲はテイラーの『shake it off』。この曲が好きだということがきっかけで二人は接近したのだ。



「凛々子、Are you ok?僕は今仕事が終わったですから、気分転換にディナーでもいかがですか?」



この、たまに敬語になったり、途中に流暢な英語が入ったり、独特なルイの話し方が凛々子は大好きだった。せっかく付き合ってるならところどころ教えてあげることもできたが、彼女はあえてそれはしなかった。



このくすっと笑える雰囲気が彼女にとってたまらなく癒しになった。



凛々子は電話を切るとルイのお迎えまでの15分間にできる限りのヘアセット、メイク直し、靴選び…ほとんど時間はなかったがあっという間にルイが到着した。



実際、普段朝からフルメイクで身なりには気を抜かない凛々子は、夕方新たに身なりを見直すほどではなかったが、無駄毛一本でも見逃したくないほどルイの前では完璧な自分でいたかった。



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