不思議の国の白雪王子

王子はそんな私を見て鼻で笑い、腕を引っぱった。


え、なんかこれデジャヴ…


そう思っていたら、



……ちゅ。



キスをした。



はっ…!?何でまたキスするの!?


でも、今回は1回では終わらなくて。


ちゅ、ちゅ、と何回も角度を変えてキスをしてくる。


「ちょ…っと」


どれだけ顔をそらそうとしても逃げ切れない。


王子の胸をドンドンと叩いて離れようとするが、ビクともしない。


こんなキス嫌なのに…本気で引き離せない。


ああ、意識が朦朧としてきた。息が苦しい。


私の足に力が入らなくなった時、ようやく開放された。


「はあ…はあ…」


王子は息が上手くできずに座り込んでいる私を見下ろす。


「このくらいのキスでへたばってるようじゃ、まだまだだなあ。」


「王子!?もしかして…!」


あ!そう言えば、ラビーとか言ううさぎもこの部屋にいたんだった…!


見られた…恥ずかしい…もう嫌だ…


全部この俺様で意地悪で変態な王子が悪いのよ!


キッと王子を睨む。


「それ誘ってんの?」


ニヤニヤと笑いながら見下ろしているところがまたムカツク…!


「そんな訳ないでしょ!なんでこんなことするのよ!」


もうこんな所早く出ようと、ドアノブに手をかけようとした時、うさぎにそれを遮られた。


私を足止めしている割には、顔はすごく嫌そうだ。


「まあ、待てよ。」


王子はまだニヤニヤと笑っている。


「帰れないなら、帰れるまでここにいろよ。」


「は!?嫌よ!私は今すぐ帰る!」


「…またキスするぞ。もっとたくさんの動物の前で。」


その言葉に私はピタッと止まる。


王子は「いい子。」なんて言って笑っている。


絶対私の事バカにしてるわ、あいつ…!


「お前さあ、ここに置いてやる変わりに毎朝俺にキスしてよ。」


「はあ?」


「俺、誰かにキスしてもらわないと起きられない病気なんだよね。」


こいつは何を言ってるんだろう。頭おかしいんじゃないの?


「はあ…お前絶対信じてないだろ。ラビー、説明。」


はっ!とうさぎは元気よく返事をして何かを取りにいった。


そして1冊の本を持ってきた。


それを開いて説明しようとするが…


「王子は…「ちょ、ちょっと待って!」」


私の言葉に、王子もうさぎも怪訝そうな顔をする。


「何でこの本、文字が反対なの…?」


その本の文字はローマ字で書かれていたが、その文字が反対だったのだ。


「お前何言ってるんだ?別に反対じゃないだろ。黙って説明を聞け。」


このグリム王国って国ではこれが普通だって言うの?


こんな文字見た事ないけど…


でも、何か言うと王子が怒るので黙って聞くことにした。


「王子の病気は、"Sleeping Beauty"と言う呪いの病なのです。」


「"Sleeping Beauty"?」


「これは魔女しかかけられない呪いで、昔、王子の美しさを妬んだ魔女がかけた呪いなのです。」


なんか、どっかで聞いたことあるような話しだな…。


「その証拠に、小娘がキスしたら目を覚ましたであろう。」


「あれは、コイツ…王子が腕を引っぱったからじゃない!」


「あ、それ俺の無意識。」


は!?


「俺、起きる時間になると近くにいる人とキスして起きるの。」


はあ!?


「い、今までそうだったならそれでいいじゃん!わざわざ私じゃなくても!」


「王子は老若男女、動物でも誰彼構わずキスをするので、女共が勘違いをしてしまうのです。」


うさぎの言うことをまとめると…


王子はいつでもどこでも寝る上に、近くにいる人なら誰でもキスしてしまうから、


何も知らないお姫様や使用人にキスしてしまうと、その人達が勘違いして


どうにかして結婚しようと求婚を迫ってくるので、王子は困っている。


と言うことらしい。
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