不思議の国の白雪王子
♠Episode 3.
「ワシは白雪王子専属の執事、ラビーじゃ。用がある時は呼ぶといい。小娘の用なんぞ聞きたくないがな!」
ここは大広間。
最初に王子が舞踏会を開いていると言っていたあの部屋だ。
「うん、分かった。ラビちゃん。」
王子の「そう言えばお前、名前は?」と言うひとことから自己紹介が始まった。
「な、ラビちゃん!?ワシはラビーだ!!!」
だって、私にはおじいちゃん執事には見えないんだもん。
ラビちゃんはプリプリと怒っていたけれど、そんな姿も可愛かった。
王子は動物に囲まれながら私達のやりとりに笑っている。
さっきいた客室から出た途端、また動物達がダダダダダーッと走って来て、あっと言う間に囲まれたのだ。
悔しいけど、動物に囲まれているのがすごく絵になる。
こうやって見ると、やっぱり王子様なのだと実感させられるな。
次に、王子を囲んでいる動物の1匹が口を開いた。
「私達は特に役割はございません。皆、森でケガや迷子になっていた所を助けて頂いたのです。」
コイツに?と思ったけれど、私を実際に追い出さなかった所も見ると、本当は結構いいやつなのかもしれない。
じっと王子を見ていたら、パチッと目が合ってしまった。
そらすにもそらせず、一応いつもの作り笑顔で返してみる。
すると口パクで「バーカ」と返して来た。
前言撤回。やっぱり嫌な奴。
「名前のない私達に、名前も付けてくださったのです。」
その言葉に、他の動物が次々に「僕マックス!」「私はバンビ!」と言った。
「そっか、皆は王子が大好きなのね。」
私がそう言うと、皆は嬉しそうに声を揃えて返事をした。
「で、お前は?まだ名前聞いてないんだけど。」
今さらだけど、王子も皆も、よく名前も知らない私を受け入れてくれたな。
そう思うと、少し涙が出そうになった。
「えっと、森 亜利子って言います。今日からお世話に…」
「「「アリス…!?」」」
私が名前を言うと、皆がざわついた。
王子も驚いたように目を見開いている。
「何か珍しい名前なの?」
そう聞くと王子は「いや…」と言いながらラビちゃんに何か指示を出していた。
ラビちゃんは戻って来ると、今度は巻物の様なものを持っていた。
それを床に広げ、一心不乱に読んで何かを探している。
「なあに、これ?」
「これは大おばば様の巻物じゃ。」
「大おばば様?」
「俺のひいひいおばあ様だよ。会ったことはないけどな。」
壁に寄りかかっている王子がそう話す。
「大おばば様は占い師だったのじゃ。おばば様の予言はハズレた事がなかった…あった!これですぞ、王子!」
ラビちゃんは長い長い巻物の最後の方を指差して王子を呼んだ。
「ああ、やっぱりアリスだ…」
その王子の呟きに、私も2人の元へ行く。
相変わらず文字は反対に書かれていた。