不思議の国の白雪王子
翌朝。
「…め…こむ…す…」
ううん、うるさい。
誰かが私に何か言っている。
「こむすめ…」
こっちは寝てるんだから話しかけないでほしい。
「小娘!アリス!!起きんか!!」
「は、はいっ!?」
怒鳴り声に驚いた私は飛び起きた。
…どこだっけ、ここ。
そこはいつもの私の部屋ではかった。
私の部屋は白を基調としていてベットはピンクで…
でもここにあるのは、天蓋の付いたふかふかのベットに、真っ赤な絨毯。
「さっさと起きて支度をせい!」
…そして喋るうさぎ。
あ、そうだ。
私グリム王国とか言う所にいるんだっけ。
本当に夢じゃないんだ…
ようやく頭が働き出した私は辺りを見渡した。
「ラビちゃん…まだ外真っ暗だよ?」
「日の出前だからな。」
「え、こんな時間から王子を起こすの?早くない?」
「王子を起こす前にも色々する事があるんじゃ。お前さんは"アリス"と言えど使用人のくくりじゃからな。使用人と同じ時間に起きてもらう。分かったらさっさと支度をせんか!」
ラビちゃんに怒られた私は渋々ベットを出る。
そして横に置いてあった服を着ようと広げた。
「え…メイド服?」
それは、パステルブルーの生地にたっぷりとレースをあしらったメイド服だった。
メイド服は分かるけど、なんでパステルブルー?
てか、丈短かすぎない?
「ラビちゃん…私コレ着るの?」
ラビちゃんは全力で無視だ。
はあ…しょうがない、着るか。
どうせこの服もあの変態王子の趣味なんだろう。
私は急いで服に着替え、顔を洗った。
その後ラビちゃんに連れて来られたのは、メイクルームの様な所だった。
「王子を喜ばせられるよう、少しはキレイにしてもらってこい!」だそうだ。
中に入ると、私と同い年くらいの女の子が立っていた。
「まあ!あなたが"アリス"?すごくキレイな人なのね!」
その子はレナと名乗り、すぐに仲良くしてくれた。
「アリスはいくつ?」
「17歳よ。」
「私より年下なのね!すごく大人っぽいわ。」
彼女はそう褒めて、「白雪王子と同い年でうらやましい。」と付け足した。
アイツ同い年だったんだ…
「王子のこと、好きなの?」そう問いかけると、レナは顔を真っ赤に染めて首をブンブンと振った。
「好きだなんてとんでもないわ!あの方は女の子の憧れよ。」
ああ、そうか。
王子は自分の本性を知っているのは一部だけだと言っていたから、
きっと彼女もしらないのだろう。
本当は俺様でドSで変態なやつだと言ってしまいたかったけど、
レナがあまりにも目を輝かせていたのでやめた。
私はレナに髪を巻いてもらい、軽くメイクをしてもらってメイクルームを出る。
コテもあるしメイク道具も一式揃っているし…この国は古いのか新しいのか分からないわ。
メイクルームを出ると丁度ラビちゃんが歩いていた。
ラビちゃんは私を見てふんっと鼻を鳴らしてついてくるように言った。
そして『2』と書かれた部屋の前で止まる。
数字も反対なんだ…。
「ここが王子のお部屋だ。覚えておくんじゃ。」
そう言うと、部屋の扉を開けた。
中は私が寝ていた部屋の4倍近くの広さだった。
広っ!一人でこんな広いところ使ってるの?
そんな事を思っていたら「早く入らんか!」とまた怒られた。
ラビちゃんは私に、王子のベットに近付くよう指示をする。
「ベットに近付けば、王子が勝手に腕を引っぱってくる。あとはそのまま口づけをすればいいだけだ。」
口づけをすればいいだけって…そんな簡単にできるわけないのに!
でも、グズグズしていたら何を言われるか分からないので、
ゆっくりとベットへ近づいた。
「てか、王子の呪いを解けば一発なんじゃ…きゃっ…ん…!」
本当に近付くだけでキスをしてきた。
3回目となれば慣れたもんだと思ったけど、全然慣れない!
不覚にも私の心臓はバクバクだ。
「王子、おはようございます。」
ラビちゃんは笑顔で挨拶をしている。
「おはよう、アリス。」
ヤツは私の腕を掴んだまま挨拶をした。
いや、私じゃなくてラビちゃんに返事してあげなさいよ。
なんで朝から王子様スマイルなの。
言いたいことはたくさんあったのに、うるさい心臓のせいで何も言い返せなかった。