不思議の国の白雪王子
コンコン。
私と王子が睨み合っていると、誰かが扉を叩いた。
私が扉を開けると、私より長いスカート丈のメイド服を来たふくよかな女性が立っていた。
女性は私を見て少しだけ微笑むと、中には入らずその場で
「陛下がお帰りになられました。」と言った。
王子も「すぐ行く。」と返事をする。
陛下って、さっき言っていた王子のお父さん?
東のチャーミング陛下…
「おい。お前も行くぞ。」
王子は不機嫌そうに言う。
私も素直に返事をすればいいのに、彼の言葉にぷいっと顔背けた、
それに対して王子はチッと舌打ちをする。
あーあ。このままじゃ私、追い出されるのも時間の問題かなあ。
そんな事を考えながら、スタスタと歩く王子の後を追いかけていった。
「鏡よ鏡。この世で1番イケメンなのはだ・あ・れ?」
『それはもちろん東のチャーミング陛下…』
「おおおおおお…!」
『…のご子息、白雪王子でございます。』
何してるんだろう、あの人…
王子に連れられて来たのは、お城の地下だった。
地下の暗闇にいたのは、王子と同じような格好をした男の人。
てか、鏡と喋ってる…?
「また息子に負けた…!」などと言ってがっくりと肩を落としている。
王子はその男の人に話しかけた。
「お帰りになられたのですね、陛下。お疲れ様です。」
そう言って深々と頭を下げるので、私も同じように頭を下げた。
「おお!息子よ!ただいまー!」
そう言って王子に抱きつく。
…この人、本当に王子のお父さん?
王子と違ってすごく無邪気で可愛い…
「てか聞いてよ!久々に帰って来て鏡に聞いたら、鏡のヤツ、俺より白雪のがイケメンって言うんだよ!?」
目に少し涙を溜めて、王子に興奮気味に言う。
うーん、ここらへんは自信たっぷりの王子と似てなくもない…
「白雪はイケメンって言うより可愛いのにね!!」
やっぱり似てない。すごくいい人だ。
「親父…人が見てるから。」
王子はいつもと違いタジタジだ。
陛下は、突然くるっとこちらを向いた。
「君が"アリス"だね?ラビーから話は聞いているよ。」
そして人懐っこい笑顔で笑いかけてくれる。
「えっと…よろしくお願いします!」
私はガバッと頭を下げた。
「はは、すごく可愛らしいお嬢さんだね。これは白雪が気に入るわけだ。」
陛下はそんな私の頭をよしよしと撫でてくれた。
私を気に入る?王子が?
その言葉に王子の方を見ると、バツが悪そうにそっぽを向いていた。
「んん、ごほん。親父、ハートの女王に剣が盗まれた。」
「あー、あのレプリカかあ。別にいらないけどなあ。また作らせればいいし。」
陛下は私から離れると、話しかけていた鏡を拭き始めた。
鏡は『もうちょっと上〜』なんて言っている。
どうやら王子よりマイペースらしい。
「そうはいかないだろ。ニセモノだとバレたら、アイツら今度こそ本物持って行くぞ。」
「その時は戦えばいいんじゃん?」
「面倒くさいんだよ!バカ親父。」
王子は陛下のマイペースさにイライラしているみたいだ。
「俺は明日アリスを連れて西側に行くからな。」
「まあ何でもいいけど、きちんとアリスちゃん守るんだよ?」
王子は「分かってる。」と返事をして地下を後にした。