不思議の国の白雪王子
「し・ら・ゆ・き!これでいいんでしょ!」
私は恥ずかしさに耐えられず両手で顔を覆った。
白雪はとても満足そうだ。
そして、顔を覆っている私の手を引き剥がし、自分の手と絡めた。
それはいわゆる恋人繋ぎってやつで。
私は驚いて「何!?」と聞いてしまった。
白雪は何も答えないけど、その手はすごく優しかった。
私の事を物の様に扱ったり、かと思えばキスしてきたり手を繋いできたり。
俺達ドS変態王子の考えている事がさっぱり分からない。
ここに来てからの私は、とことん白雪に振り回されっぱなしだ。
ふと気が付くと、私達は森を抜けて街の中を歩いていた。
街には大勢の人が行き交っていて賑やかだ。
いつも静かなお城とは違う雰囲気に、私はついテンションが上がってしまう。
私には、とても貧困で悩んでいる様には見えなかった。
「白雪!あれは何?」
私はたくさんの人が集まっているワゴンを指差す。
「Fried bread。揚げたパンに砂糖をまぶした菓子だな。この国の名物だ。」
次に、大きなピエロの顔をした看板が目に入る。
「白雪、白雪!あれは!?」
「見せ物屋だな。サーカスでもやってるんじゃないか?」
私は初めて見る街並みに、目に飛び込んでくる物全部を白雪に聞いていった。
彼はそんな私を鬱陶しがる様子もなく、全て優しく笑いながら教えてくれた。
「白雪は街に詳しいのね!」
「小さい頃に城を抜け出して、よく1人で来ていたからな。ラビーにめちゃくちゃ叱られたけど。」
そう言って、その時の事を思い出したのか苦そうに笑った。
街で白雪が王子だと気付く人は誰もいなかった。