不思議の国の白雪王子
しばらく街を進んで行くと、白雪は1つの店の前で止まった。
壁は白と黒の格子柄になっていて、どこか現代的だ。
ほとんどのお店が開いている中、このお店は"close"のプレートが出ていた。
でも、"close"と書いてあるのに中にはお客さんらしき人が2、3人いる。
白雪は扉を開けて中に入る。それに続いて私も入っていった。
中に入ると、私は驚いて目を見開いた。
お店の中は奥に広く長い作りになっていて、その両側の壁一面には、たくさんの種類の帽子が並べられていたのだ。
「すごーい…」
私はその帽子を見て、その一言しか思いつかなかった。
また、飲食店のように机とイスが並べられていて奥のカウンターの上には紅茶の茶葉のビンがいくつも置いてある。
2、3人のお客さんも紅茶を飲んでいる所を見ると、ここは帽子屋さんではないらしい。
私がキョロキョロと店内を見ていると、白雪がカウンターのイスをスッと引いて、私に座るように促した。
その隣に白雪も座る。
私達が席に着くと、店の奥からマスターらしき男性が出てきた。
大きな黒いシルクハットを被って、メガネを掛けている。
私達の前へ来ると注文を聞いてきた。
白雪は注文はせず、男性に「俺だよ、"帽子屋"。」といった。
帽子屋って…またまた聞いたことあるような名前だな。
"帽子屋"と呼ばれたその男性は白雪の顔を見ると、驚いた様な顔をした。
「白雪っ!?何してんだお前、こんなところで!」
どうやら白雪の事を知っているらしく、慌てて店の中にいたお客さんを「悪いけど店仕舞いだ!」と追い出した。
そして"close"のプレートを裏返し"open"にした。
そこでようやく、私はこの国の法則性に気がついた。
反転している文字と言い、逆回転する時計と言い、
お店のプレートと言い…もしかしたら、全ての物事が反対でまわっているの?
店仕舞いを済ませた"帽子屋"さんが「飲み物は?」と聞いてくれた。
白雪は"冷たい"アールグレイ、私は"温かい"アッサムティーをお願いした。
すると出てきたのは"温かい"アールグレイと、たくさんの氷が入った"冷たい"アッサムティーだった。
白雪は、それを特に何も言わずに口へ運ぶ。
やっぱり、反対なんだわ…!
この国は全ての物事が反対に動いているみたいだ。
私は不思議なこの国の謎が1つ解けた気がして、何だか嬉しくなった。
「それで?今日はどうして来たんだ?」
帽子屋さんは私の隣に座り、不思議そうに白雪に尋ねた。