不思議の国の白雪王子
帽子屋さんは「もちろん東側のね」と付け足した。
情報屋って、なにするんだろう…?
あまりピンと来ないので尋ねてみる。
「それってどんな事するんですか?」
「う〜ん、えっと…スパイだったり、浮気調査だったり、はたまた探し物だっ「あ!!」」
突然、ずっと黙っていた白雪が声を上げた。
「帽子屋!探し物!見つかったか?!」
白雪は切羽詰まった様に帽子屋さんにつめ寄る。
コイツがこんなに焦るなんて…そんなに大切な物なのかな?
帽子屋さんは「ああ、あれね〜…」とバツが悪そうに白雪から目をそらした。
そんな彼を見て、白雪は怪訝そうな顔をする。
「見つかってないのか?」
「ありとあらゆる手を尽くして探したよ。もちろんハートの女王の城も。」
帽子屋さんは、お手上げと言う様に両手を上げる。
白雪が突然掴みかかった。
「もっとちゃんと探せよ!あれは…あの時計は…!」
ん…?時計?
「そんな事言ったって、見つからない物はしょうがないだろ!」
「お前だってあの時計が俺にとってどれだけ大切か知ってるはずだ!」
「だから手は尽くしたっつーの!」
2人はお互いの胸ぐらを掴み、今にも殴り合いそうな勢いだ。
私はそんな2人を見ながら、おずおずと口を開いた。
「ねえ、白雪が探してる物って時計なの?どんな時計?」
「あ?普通の時計だよ。」
白雪は不機嫌そうに返事をする。
「と、時計にも種類があるじゃない。掛け時計とか置き時計とか。」
うう…白雪が不機嫌の時って結構コワイ…
「だから普通の懐中時計だって。」
懐中時計…!やっぱりそうだ!
「もしかしてそれって…」
私は服のポケットにゴソゴソと手を突っ込んで、"時計"を取り出す。
そう、私がこの世界に来る前に学校で見つけた、あの懐中時計だ。
「これの事じゃない?」
「「あ!」」
白雪も帽子屋さんも『それだ!』と言う顔をした。
「何でそれをアリスが…?」
不思議そうに私を見つめる白雪に時計を渡すと、大事そうにギュっと両手で包み込む。
「私がここに来る前から持ってたの。」
白雪はまだ不思議そうだ。頭の上に?マークが見える。
「まあ、何でもいいじゃねえか。戻って来たんだから。」
帽子屋さんが白雪の頭をポンポンと撫でる。
白雪は「そうだな。」と言って時計を見つめた。