不思議の国の白雪王子

白雪は胸ぐらから手を離して、両手で"ブラッディ"を引き剥がした。


「ギュギュ!!」


ブラッディは怒っているようで、低い声で鳴いている。


あの子、スノーに似てる!


スノーと同じでふわふわとした綿みたいな生き物。


違う所と言えば、毛が黒い事くらいだ。


すると私の横にいたスノーが、ブラッディに向かって飛んで行った。


2匹は「キュキュ!」「ギュッ!」「キュ〜!」などと鳴き合っている。


どうやら会話をしているらしい。


2匹並んだその姿は、1匹でいる時よりも可愛かった。


可愛い〜っ!今すぐ頬ずりしたいけど、そんな雰囲気じゃないしなあ。


「うーん」と私が悩んでいると、白雪が「チッ」と舌打ちをした。


「スノー、行くぞ。アリ…キャサリンも。」


そう言うと、また私の手を掴んで歩き出した。


慌ててスノーも付いてくる。


そんな白雪の背中に向けて、


「…母さんが、お前に会いたがってた。」


とクロさんが言った。


クロさんのお母さんって、ハートの女王…?


チャーミング王が白雪のお父様だったから、不思議とそう思ってしまった。


どうしてハートの女王が白雪に会いたがるんだろう?


でも白雪はガン無視だ。


ちょっとくらい反応してあげればいいのに…


私は首だけでクロさんとチェシャさんに頭を下げ、ハートの女王の城を後にした。
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