不思議の国の白雪王子

「っ…黒雪だけには絶対渡さねえ。」


すると突然、白雪の顔が近付いて来た。


「…?!」


キスをされたのだ。


白雪は何度も何度も、角度を変えてキスを落とす。


最初は触れるだけのキスだったのが、どんどん深くなってゆく。


「やめ…っ!」


白雪とは、ここに来てから何度もキスをしている。


でも、今までのキスは、無理矢理でも全部優しかった。


私の気持ちをちゃんと考えてくれてるような、優しいキス。


それなのに、今白雪としているキスは…


私の気持ちなんてどうでもいい。


ただ自分が満たされればそれでいい。


そんな乱暴なキスだった。


「っ…イヤ…」


どうしてこんな事するの…?


いつの間にか、私は涙を流していた。


それでも白雪は気付かずにキスを続ける。


「…しらっ…ゆき…」


私が名前を呼ぶと、肩がビクッと揺れた。


私はその隙を見逃さなかった。


手首を押さえつけていた手を振りほどき、ドンっと白雪を突き飛ばす。


そこでようやく、白雪は私の顔を見た。


ポロポロと涙を流している私を見て、驚いたような表情をする。


「どうして、無理矢理こんな事するの…っ」


「…………」


「白雪なんて…大ッキライ。」


私は白雪にそう告げて、急いでこの広い広い部屋から飛び出した。


自分の部屋へ向かう途中も、涙が溢れて止まらない。


「うう…っ…グスッ」


拭っても拭っても涙は溢れ出るばかり。


白雪が怖かった。

目も、押さえつけられた手も、唇も…


あんな白雪は初めてだった。


いつもなら、彼の違う一面を知れたら少し嬉しくなる。


それが何故かは分からないけど。


でも、今日の白雪は、今日の白雪の一面は…


知りたくなかった。あんな白雪見たくなかった。


そんな事を考えたら、また悲しくなった。
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