不思議の国の白雪王子
「シロの忘れ物。昨日、これ取りに来たんでしょ?」
そう言って、背中から何かを抜き取った。
「剣…!!」
それはチェシャさんに盗まれたはずの剣だった。
でも、どうして盗んだ物をわざわざ…?
私が思っている事が顔に出ていたのか、クロさんはまた薄っすらと微笑んで教えてくれる。
「それ、レプリカってバレたら母さんに怒られるからさ。バレる前に返しに来た。」
「レプリカだって分かったんですか!?」
私は本物を見たことがないから分からないけど、
チェシャさんが間違えて盗んで行く程にはそっくりなはずなのに。
するとクロさんは「そりゃあ、何年も本物を見て来たから分かるよ。」と言った。
「本物を見て来た…?」
それに、何年もって…
本物の剣って、ずっと東の城の宝なんだよね?
なのにどうしてクロさんが本物を見れたんだろう…
私が1人で考えていると、クロさんが口を開いた。
「うん?オレここに住んでたし。」
「ええ!家出!?居候!?」
私のその言葉に、クロさんはポカンとした。
だってクロさんは西側の人だもんね。
きっとハートの女王と何かあって家出したんだ。
何か西側と東側の関係って色々軽いノリっぽいし…
家出して東の城で居候してもおかしくないな。
私は勝手に納得し、うんうんと頷く。
「えっと…オレは家出も居候もしてないよ?」
クロさんのその返事に、今度は私がポカンとする。
「え?だってココに住んでたんですよね?」
「うん。」
「でも、クロさんは西側の人じゃないですか。」
「うん。今はね?」
「…今は?」
私はクロさんの言っている事が理解できず、
ますますポカンと口を開けた。
「あれ?ラビーとかから聞いてない?」
「何をですか?」
「オレの父親は、東のチャーミング王だよ。」
東のチャーミング王…?
それは白雪のお父さんじゃ…?
「っええええ!?」
私はクロさんの話をようやく理解し、城中に響き渡る声で叫んでしまった。