不思議の国の白雪王子

「絶対にイ・ヤ!」


「なんでだよ?」


「何がなんでも!イヤなの!」


どうしてもイヤだと首を振るが、白雪は「なんで?」と何回も聞いてくる。


私はとうとう耐えられなくなり、思わず顔を上げて叫んだ。


「んもう!顔がむくんでるの!そんなの見られたくないでしょ!乙女心分かってよ!」


白雪はそんな私を、ぽかんと口を開けて見ていた。


相変わらず、腕は私を抱きしめたままだけど。


あ、顔上げちゃった…!サイアク…!


私は慌てて下を向いて顔を隠す。


しかし、もう見られてしまった事に変わりはないので、ガクッと肩を落とした。


そりゃあ、私はいつだって可愛いわよ?


泣き顔だって可愛いし。


でも、泣いた後だけは悲惨な顔になっちゃうの!


誰にも見せた事なかったのに…


てか、人前で泣いた事なかったかも。


私がそんな回想にふけっていると、白雪も顔を下に向けた。


肩が震えているように見えたので耳を凝らすと、クックッと言う声まで聞こえて来る。


こ、コイツ…笑ってる!


「ちょっと!何笑ってるのよ!」


「だ、だって、お前…っ!目ぇパンパンじゃん!」


白雪は笑いを我慢できなくなったようで、足をバタつかせて爆笑している。


ギャハハ、と王子らしからぬ笑い声を上げながら。


「わ、笑い過ぎでしょ!」


確かに自分でも酷い顔だと思ったわよ!?


でも、そこまで笑う事なくない!?


白雪はまだ爆笑している。


「うう…もういい!顔洗って来る。」


私はヤケクソに洗面所へ行こうとしたが、やっぱり白雪の腕の力が弱まる事はない。


「ちょ…ククッ…待てよ!」


そう言いながらもゲラゲラ笑っている。


笑い過ぎなのか、どこか苦しそうだ。


私は白雪の腕から抜け出せないので、それを見ているしかなかった。


「あー、腹いてぇー…」


私がしばらく待っていると、白雪の笑いは数分後に収まった。


あれだけ笑えばお腹も痛くなるわよ…


そして、急に真剣な顔になって私を見つめる。


な、何だろう…


私もそんな白雪を見つめ返す。


「別に、そんな酷い顔してねえじゃん。」


……………はあ!?


「さっきまで爆笑してたヤツが何言ってんの!?」


「ばっ…お前、俺は元々こーやって言うつもりだったんだ!なのにお前があんまりにも面白い顔してるから…ぷっ!」


「面白い顔ゆーな!」
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