不思議の国の白雪王子

「ご、ごめん!つい…!」


急いで謝るが、反応はない。


陶器の様に白い肌は、私に叩かれた所だけ赤く染まっていた。


何で反応ないの!?


私、今度こそ本当に地下牢行きなんじゃ…!?


それか、お城を追い出される!?


私の脳内はもうパニック。


すると、白雪の顔がゆっくりと私の方に向き直った。


顔は無表情。


白雪の無表情って初めて見たけど…


どの表情よりも1番怖いよ!


しばらくその状態で見つめ合う。


私は、蛇に睨まれた蛙の気分だった。


そして、また顔が近付いて来る。


ちょ…!また叩いちゃう…!


私がもう一度右手をスタンバイし、ギュッと目をつむった、その時。


コツン


おデコに何か硬い物が当たった。


ゆっくりと目を開けてみると、目の前には白雪のどアップ。


私と白雪は、お互いのおデコをくっつけ合っていた。


「え…あの、白雪…?」


これがどう言う状況なのか理解できず、ますますパニックだ。


「あのさ…」


ようやく、ずっと黙っていた白雪が口を開いた。


「???」


「………ごめん。」


「え?」


何に対して謝っているんだろう?


今の状況で謝るのは私じゃない?


「…昨日のこと。」


あぁ、なるほど。


「…アリスに、怖い思いさせた。」


「……うん。」


「本当に…ごめん」


「……」


「無理矢理なんて、許される訳ねえけど…」


「……もう、いいよ。」


私は白雪に笑いかける。


白雪は、本当に申し訳ないって顔をしていて。


それだけで、なんだかどうでも良くなった。


「でも、もう絶対にあんな事しないで。」


「…ああ。」


「言いたい事があるなら、まずは話して。」


「…ん。」


「あんなに怖い思い、二度としたくないよ…」


「…ごめん。」


私を抱きしめる腕が、より一層強くなる。


その腕が、今1番私を安心させてくれた。
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