不思議の国の白雪王子

私達は、お互いのおデコをくっつけたまま目を合わせる。


そして、どちらからともなく笑い合った。


白雪はどこか照れくさそうだ。


照れ隠しをするように、頭をグリグリと擦り付けてくる。


そんな時間が、とても幸せに感じた。


でも、何か忘れてる気がする…?


なんだっけ。うーん…?


「あ、クロさん!」


そうだ!クロさん軟禁されてるんだった!


「白雪!クロさんは剣を返しに来てくれただけなの!だから開放してあげて!」


私が焦りながら言うと、白雪は一気に不機嫌そうな顔になる。


今の今までご機嫌だったのに。


「そ、そんな顔しないでよ…」


そう言っても、ますます眉間にシワが寄るばかり。


「あんなヤツ放っておけばいい…」なんてブツブツ呟いている。


「そーゆーワケには行かないでしょ。」


私は、口を尖らせて拗ねている白雪の手を引き、扉のドアノブに手をかけた。





しかし、扉を開ける事はできなかった。





白雪が私の手を引っ張り、自分の方に引き寄せたからだ。


私は再び白雪の腕の中にすっぽりと収まってしまう。


な、なに!?


何でまた抱きしめられてるの!?



「し、白雪?」




「……キスして、いい?」




「へ!?」



予想もしていなかった問いかけに、間抜けな声が漏れてしまう。


だって、急に「キスしていい?」って…!


「さ、さっき『もうしない』って言ったじゃん!」


「無理矢理は、な。」


「え?」


どう言う意味?


白雪の言っている意味が全く分からない。


何を考えているのかって事も。


「俺がイヤなら、殴るなり蹴るなりして……全力で逃げればいい。」


「いや、あの…」


「無理矢理は…しねえよ。」


白雪はずるい。


そんな事言われて、そんな真剣な目で見つめられて。


逃げられるワケ、ないよ…






私は、ゆっくりと目を閉じた。








2人の唇も、ゆっくりと重なる。







部屋の窓からは、太陽の日差しがサンサンと振り注いでいた。


唇が離れ、ギュッと力強く抱きしめられる。


この腕を、失いたくない。


ずっとこの腕に包まれていたい。



私は






私は…







白雪の事が、好きだ。







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