不思議の国の白雪王子
眠りについてからどれくらいが経っただろう?
夜中、私はガチャガチャと言う音で目を覚ました。
「お母さん…?」
私がリビングに行くと、憔悴しきった母親が
ビールの缶を片手に机につぶれていた。
またか…。
両親は私が小さい頃に離婚していて、今は私と母親の2人で暮らしている。
私はコップに水を注ぎ、黙って母親に渡した。
ガチャーンッ!!
そのコップを母親は投げ落とす。
それもいつもの事なので、割れたコップの破片を片付ける。
どんだけ割れば気が済むのかなあ?
そんな事を考えている私に母親は言った。
「ママね、彼に結婚しようって言ったら断れちゃった。」
「………」
「彼、子供がいるのが嫌なんですって。養いたくないんですって。」
「………」
「そんなの、私が働くからいいのにねえ?」
「………」
「あーあ。あんたなんて産まなきゃよかった。」
「…早く寝なよ。」
「いつ寝ようとあたしの勝手でしょう…」
私が自分の部屋に戻ろうとドアを開けたとき、
母親はテーブルの上に置いてあったリンゴをひとかじりしていた。
娘を憎み、か細い手でリンゴを持つ。
「…白雪姫の魔女みたい…」
パタン。