さよなら、もう一人のわたし
 千春の家はどこにでもありそうな洋風の一軒家だった。一つだけ他の家にはあまり見られないものがあった。それは千春の家のリビングに入ったときに気付いた。多くのDVDやビデオが並んでいた。

問題はその量だ。本棚三つ分ほどの作品が並んでいたのだ。わたしは千春の許可を得て、それらを確認する。映画は多くのものを見ていた自信はあるが、わたしの知らないものがほとんどだ。

「好きなのがあったら借りてもいいよ」
「ありがとう」

 わたしが見たい映画を探していると、扉が開いた。扉をあけて入ってきたのは背の高い顔立ちの整った男性だ。
 その人を見てわたしの胸が不意打ちのように高鳴った。彼女の兄だろうか。

男性的というよりは中性的な雰囲気を出していた。長い睫毛に、切れ長の瞳。涼しげな目元。通った鼻筋。俳優といわれても納得してしまうほどの容貌をしていた。顔も小さく、スタイルがいい。

「千春。お前」

「友達が来ているから説教なら後でにしてね。お兄ちゃん」

 千春に言われてわたしの存在に気付いたのか、彼の目が見開かれる。そして、彼は鋭い視線でわたしを見ていた。歓迎されているようには見えなかった。

「どう思う? 愚かな兄のために妹が見つけてきてやったのよ」

 千春が空気が読めていないのか、軽快な口調で語りだす。
< 11 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop