さよなら、もう一人のわたし
 今まで話をしていた千春が突然静かになってしまった。

 彼女の顔が真っ赤になっていた。

 兄が彼女の弱点なのかもしれない。

「嫌な思いをさせて悪いな。もし君がその気なら、次の日曜、時間があるかな? 詳しい話をしたいと思うけど、できればそのときに確認をさせてほしいから練習もしておいてくれ。他にもあと一人来ると思うから」

「でも、わたしは話を受けるかはまだ決めていなくて。それにお母さんにも話をしないと」

「それはあとから考えてくれればいい。事情をいろいろと説明したいんだ。いろいろとあってね」

 わたしは意味が分からないが、とりあえず頷いていた。

「あなたの名前は?」

「俺は成宮尚志。こいつの兄だよ。よろしく頼むよ」

 千春は待っていてと言い残すとそのまま部屋を出て行った。
 部屋にわたしと尚志さんだけ残された。

 改めて彼をちらっと見ると、目が合ってしまった。

「聞きたいことあるなら言ってくれて構わないよ」

 彼はわたしを見て微笑んだ。
 わたしは思わず顔を背けた。
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