さよなら、もう一人のわたし
「おじさんも事務所の関係者なの?」

「当たっているような、少し違うような。ま、今度の日曜になれば分かると思うよ。わたしは正直嫌だけどね」

 彼女はげんなりとした顔をする。

「だったらわたしを誘わなくても。別にいい人がいるんじゃない。それこそ前原さんとか」

「違うの。あなたがいいんだけど、おじさんに会うのがね。ちょっと面倒な人なの」

 怖い人なのだろうか。千春が難しい顔をしたため、それ以上聞けなかった。

 わたしと千春はそこから歩いて十分ほどの場所にあるスーパーの前で別れることになった。




 わたしの住むマンションはそこから二十分ほど離れた場所にある。家に入ると、電気をつけた。
 家に帰っても大抵お母さんは仕事中だ。

 わたしの父親はわたしが生まれる前になくなったのだ。だから、父親の写真をみたこともない。
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