さよなら、もう一人のわたし
 千春は兄の背中を押し、部屋を追い出した。もちろん、彼が持っていたアルバムも一緒に部屋を出て行く。そして、扉を閉めた。

「それで日曜日はお兄ちゃんと一緒に行ってね」
「千春は?」
「わたしはちょっと用事があるの。待ち合わせはどこがいい?」
「どこでもいいよ」

 わたしは千春の強引なまとめでこの近くの最寄り駅で待ち合わせをすることになった。

「お母さんには話をした?」
「まだ。今日、話をしようかなと思っているけど」

「話をするのは日曜まで待ってくれない?」
「どうして?」

「伯父さんは厳しい人だから、どうなるか分からないし、断る可能性も少なからずあるとは思う。あなたのお母さんが反対しないと分かっているなら尚更、ね。もし、お母さんがダメだと言ったら、そのときは断ってくれればいいよ」
「わかった」

 そんなわけで日曜日にわたしは尚志さんと一緒に、彼女の伯父さんに会いに行くことになったのだ。
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