さよなら、もう一人のわたし
「久しぶりのほうがいいかしら?」

 彼女は髪の毛をかきあげた。

「同じ学校だったの?」

「そうよ。この前、転校してきたの。家庭の事情ってやつ?」

 わたしはそれ以上聞けず、黙り込む。そう言われてずけずけ聞けるほど無神経ではない。

「今日一緒に帰りましょう」

 わたしに選択の余地のない、断言された言い方のような気がしないでもなくない。
 一緒に帰るだけなら、何も実害はないだろう。

「いいですよ」
「放課後ね。わたしは成宮千春」
「わたしは平井京香」

 成宮千春はじゃあね、というと、わたしに背を向けて歩いていった。

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