さよなら、もう一人のわたし
 ホームルームの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。辺りを見渡したが、教室の外にあの子がいる気配は全くなかった。あの子と一緒に帰る約束をしたものの、待ち合わせの場所を決めていなかったのに気付いたのだ。

 わたしは彼女の名前しか知らないし、彼女もそうだろう。彼女がわたしのクラスを知っているとは思えなかった。

「真田さん」

 わたしは隣の席の女の子を呼んだ。

 彼女は帰り支度を止めて、わたしを見た。

 きりりとした印象を受ける、綺麗めの女の子で、クラスに一人はいる、交友が広く、誰とでも仲良くできるタイプで、顔の広い彼女なら千春を知っているのではないかと考えたのだ。

 彼女は突然呼び止めたわたしに嫌な顔をせずに、微笑んだ。
 こういうところが、彼女が誰にでも好かれる理由だと思う。

「成宮千春って子知っている?」
「成宮?」

 そう言うと、真田美紀は眉間にシワを寄せた。

「確か転校生だよね。五組の子」
「五組か。ありがとう」

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